「ルージュ 硝子の太陽」 誉田哲也

ストロベリーナイトをはじめとする、姫川玲子シリーズの一つである。

前作を読んだことがある方はお馴染みであろうが、読んだことがない私でも登場人物の関係性や周りの空気などが容易に想像出来、楽しめた。

物語の中心は世田谷区祖師谷で起きた母子三人惨殺事件であり、この事件を捜査していくうちに浮上する28年前に起こった未解決の一家殺人事件がカギとなっていく。

どちらの事件も凄惨で、想像するたびに吐き気を覚え、読み進めるのがつらくなるのだが、それ以上に続きが気になってしまうストーリーと軽快なテンポで、ページを捲る手を止められなかった。

また様々な視点で描かれており、物語が進みうちに全貌が露わになっていき、ばらばらだった点と点が最終的に一つの線になっていくという醍醐味が味わえる。

残念ながら、今作では明かされなかった事件があり、こちらは別視点で作られた別作品で読むことが出来るらしい。機会があれば読むのも良いだろう。

私が今作を読み進めていくうちに特に注目したことは、実際におきた昭和の事件や現代の社会で今もなお問題となっている事柄が描写されていることである。戦争を体験した一人の外国人による見解や他の描写から、今の日本のあり方に問題提起し、一人一人考えてほしいという、作者の思惑があるのではないだろうか。

米軍基地、尖閣諸島問題など、アメリカや中国から搾取されている、またされつつある日本であるが、今後日本の安寧を願うなら、自分たちで守れる国を作らなくてはいけない・・・なんていうメッセージがあると浅い知識の私は思うのである。